楽々人ブログ

仕事の合理化に関する実践ノウハウを書いたブログです

第3回 RPAに取り組む際の実践ノウハウ「現行業務の把握」

 続きです。

 

第1回、2回で「自動化の目的、背景」「自動化対象業務の絞り込み」について触れました。今回は絞り込んだ自動化対象業務の現状の把握です。

詳細で正確でわかりやすいマニュアルを作成している会社、それが適切にメンテナンスされている部署の方にとってはこの回は読む必要がありません。

 

私の属する会社は、これまでにISO、内部統制等が課題に上がるたびにマニュアルの整備に取り組んできました。しかし残念ながらそれらを維持できている部署は少数で、自動化にあたり一から現行業務の把握をしなければなりませんでした。

 

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私の会社ではWinActorを使って自動化を進めています。EXCELマクロもある程度利用しています。出来上がったロボットの規模ですが1,000~1,200ノード程度のものが多くなっています。

現行業務の整理は二の次にしてとにかく自動化を推し進め、現場に時間的なゆとりを取り戻すことを短期的に目指しています。

そのため複雑な手作業をそのまま再現したものも多くなっています。自動化した業務の規模よりもその複雑さがノード数を多くしています。

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現行業務と言うのはそれなりに複雑でイレギュラールールも多々存在することが多いのではないでしょうか? そのため現行業務の把握は容易ではありません。そしてここで難航するとロボットの開発ピッチが落ち、目標としている年間自動化時間が達成できません。私の場合、これにコロナ禍も手伝って初期の開発ペースはスローなものになりました。

 

一人で行っていたこともあって「現行業務の把握」がボトルネックであることは明白でした。「BPM(Business Process Management)」も検討しましたが、高額であり決裁を得られる気がしなかったため見送りました。

 

ショートムービーを使ったマニュアルが流行っていたことをヒントに、現在の業務を録画して、それを元に現行手順書(AS-IS)を作成することにしました。これは大変有効でした。録画による現行業務の把握のメリットは、

  1. 出張・移動する必要がない
  2. 作業手順をイレギュラーなど含めて具体的に詳細に正確に把握できる
  3. 現場との質疑の頻度が少なくて済む
  4. 何度も見返すことができる(理解に不安がある点を確認しやすい)
  5. 作業スケジュールが立てやすい
  6. ストレスが少ない

等々です。取り分けて1.はコロナ禍で非常に効果的でした。

 

この録画を元に現行作業の手順書を作成します。録画のキャプチャと簡単な説明書きだけなので短時間で作成することができました。

 

次回は現行手順書を元にした「自動化の検討」です。

 

 

第2回 RPAに取り組む際の実践ノウハウ 「自動化対象業務の絞り込み方」

続きです。

 

今回は「自動化対象業務の絞り込み方」がテーマです。

業務改善に取り組む際に最初に行うのは「業務の洗い出し」です。ISOの時も、内部統制の時も「業務の洗い出し」でした。ときにこれが業務改善の取り組みのエネルギーの浪費につながることがあります。過剰分析、過剰計画。頭でっかちな取り組みは「失敗への早道」になることがあります。自動化のように「投資」が伴うときは「取り返そう!」という意識からかそうなるリスクが大きくなる可能性があります。

 

私がおすすめする「自動化対象業務の絞り込み方」は下のような方法です。

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1.パイロット部署を決める(1,2部署で十分)

2.その部署と一緒に定型業務の洗い出しを行う。

3.これをパレート図にして、何割の業務(数)が所要時間の何割を占めているのかを見える化する。2:8の法則があてはまることが多い。

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4.機械的に上位2割の業務を自動化のターゲットにする。上位2割に位置する業務の所要時間を見る。上のグラフでいえば500時間。これを他の部署でも目安にする。つまり「年間500時間以上の業務を洗い出してください」と。これにより所要時間で8割を占める業務を短時間で洗い出せる。上位の業務を自動化できると考えた場合、現場は「うんざりする洗い出し」ではなく「にんまりする洗い出し」になる。肌感覚のモティベーションが生まれる。

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これだけで既に十分な数の自動化候補業務リストが出来上がります。これを第一期自動化対象としてはいかがでしょうか?最小限の投資で最大限の成果につなげるという意味でも効果的ですが、メリットはそれだけではありません。

 

何より「組織の活性化」につながります。手がかかっていた業務が自動化され「時間」を生みます。また大掛かりなシステム開発とは違い失敗する率が低いので確実に「成功体験」「自信」を得られます。そして何よりそれに携わった「社員の成長」こそ組織の宝です。この社員のネットワークができると会社の成長基盤の一つになります。

 

さて、こんな風に短期間に目に見えて業務や組織が変化したら隣の部署はどう思うでしょうか?確実に良い影響が出てきます。そしてアドバイザーが隣にいるわけですから隣の部署も自動化の成功率が高くなります。場合によっては類似業務があるかもしれません。その場合は業務を標準化したうえでの自動化が進みます。

 

「自動化」は大掛かりに構えなくても、勝手に大きな取り組みになること請け合いです。「自動化対象業務の絞り込み方」が組織文化醸成、人材育成につながります。ぜひお試しください。

 

Starts small and grows big!です。

 

次回は「現行業務の把握の仕方」です。

第1回 RPAに取り組む際の実践ノウハウ「自動化の背景、目的」

 RPA(Robotic Process Automation)は昨今大流行りです。わが社でも2018年にパイロット展開、2019年推進組織設置、コロナ禍で遅延はありましたが、2021年3月現在25体のロボットワーカーが稼働しています。

 

 この記事をご覧の方の多くは、同様のお仕事をされているないしは導入検討中のお立場なのではないかと思います。そうした想定で何はともあれ私の自動化の実践ノウハウについて順に記載して行きたいと思います。※当面週一本の記事アップを目指しています。

 

構成は以下のようです。

(1)自動化の背景、何を目指すか?

(2)対象業務の絞り込み方

(3)現行業務の把握の仕方

(4)自動化の設計図づくり

 ※ 開発は委託することを想定し、記事の範囲外とさせていただきます。

(5)効果検証

 

ぜひ、ご意見をいただけますようお願いします。

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(1)自動化の背景、何を目指すか?

  社内の業務効率向上が必要だ、具体的には…と日々頭を悩まされている方も多いかと思います。その悩みの一つが「どのように社内を説得するか?」なのではないでしょうか?それは「何のためにそれが必要なのか?」の自問自答のプロセスかもしれません。自動化は流行ってはいますが、いざわが社で、自部署でとなると経営層から怪しまれ、現場から疎ましがられということになりかねません。一度、背景を整理しておくことが必要かと思います。また自動化で目指すところ、目的はそれぞれの企業によって異なるとは思いますが、私の思うところも記しておきたいと思います。

 ①業務自動化の背景は「人手不足」?

 1995年から15~64歳の人口が減少し始めました。2013年に改正高年齢者雇用安定法が施行され高齢者の就労が促進されましたがその後も有効求人倍率は上昇の一途でした。「人手不足」感は年々悪化しました。だからRPAが、自動化が云々という説明ももっともな気がします。

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 事務職に絞るとどうでしょうか?少子化で事務職も有効求人倍率は上昇しています。しかし厚生労働省2019年4月発表「職業別一般職業紹介状況[実数](常用(除パート))」のデータを見ると、事務的職業の有効求人倍率は全職種の中で最も低い0.48です。事務職に就くのは相変わらず狭き門です。業務自動化の動機は「人手不足」対策とは言えません

 

 それでもRPA市場は年々大きくなっています。矢野経済研究所の調査では2018年から2020年にかけて市場規模は2倍に拡大する見込みです。企業の導入意欲も旺盛です。

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国内RPA市場規模推移

 

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 ②2014年論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」

  先ず、テクノロジーの到達点の問題として考えたとき人工知能やロボットが人の仕事の多くの分野を代替しうるようになっていることは否定しがたい事実です。AI(人工知能)の研究を行っている米オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が2014年に発表した論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」では、コンピューターによる自動化が進むことにより、20年後の将来には47%の仕事がなくなるという衝撃の結論が導き出されています。

 ③AIやロボットなどのテクノロジーをよりよく利用した組織の方がよりよく社会貢献できる

  企業や経営者がどのような社会貢献を目指すのか?何がその物差しか?これはテクノロジーの利用とは別な問題でこれこそ人間が本来悩み考えるべき領域かと思います。しかしいったんそれが定まった時、定型業務にあくせくしなければならない企業や組織とそこから解放された企業や組織とでどちらがよりよいパフォーマンスを得られるでしょうか?

 目先の問題として「競争」「生き残り」という問題も無視できません。いずれにせよ「人が機械のようにミスなく疲れ知らずに定型業務を遂行すること」を求められながら、すり減った心と体から絞り出されるアイデアでは「生き残り」さえ難しいように思います。

 AIやロボットをよりよく(より正しく)利用し、付加価値の高い仕事の比率を高めていく組織改革の一環、それが定型業務の自動化の取り組みです。

 

 ここを含めて社内を説得することが必要かと思います。したがってこれを社内で進めるか否かの判断は経営層の責任です。そして組織改革の青写真を伴わない自動化の取り組みは「仕事を取られる」「企画部門の思い付きに現場はいつも辟易している」「うちの部門には関係ない」等の本音にの壁を突破できないように思います。

 

次回、3/14(日)更新予定です。